夢の新農薬!? ネオ二コチノイド

国際環境NGOのグリーンピースが
「オーガニック食品だけで10日間生活したらどうなる?」
という動画を公開しています。

結果は、尿中の農薬が減少したというもの。 

特に、子どもは減少が顕著だったそうです。


「我が子の身体の中にこれほど農薬があったなんて……」


調査に協力したお母さんの表情が印象的でした。


そんなわけで、現在主流の農薬「ネオ二コチノイド」について
コラム風にまとめてみました。

例によって長いので(笑)、電車での移動など
お時間のあるときにでもご覧いただければと思います。

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「ミツバチがいなくなったら人類は4年しか生きられない」


かの有名なアインシュタインの言葉です。

4年という年数の根拠はともかく、
ミツバチがいなくなったら私たちの食しているものが激減することは
想像に難しくありません。


■野菜・果物が食卓から消える

ミツバチがいなくなることで失うものは「はち蜜」だけではありません。

普段わたしたちが食べている野菜や果物、
その約80パーセントが、ミツバチがいるからこその恵みなのです。

トマト・ナス・きゅうり・玉ねぎ・レタスといった野菜たち、
スイカ・メロン・イチゴなどの果物もミツバチがポリネーター(花粉媒介者)の
役割を果たしてくれていることにより果実が実るのです。

今、この大自然の営みが脅かされています。

我々人類が使用する農薬=殺虫剤によって、
世界中でミツバチが激減しているというのです。






■夢の新農薬

現在、農薬の主流は「ネオニコチノイド系」といわれる種類のものです。

世界でも日本でも甚大な被害をもらたしているといわれている
このネオニコチノイド系農薬、これはどういった農薬なのでしょうか?


ネオニコチノイド系農薬を語る前に、農薬の歴史から紐解いていきたいと思います。

1950年代、「DDT」などの有機塩素系農薬が使用されるようになりました。
毒性が強く、生物濃縮・残留性なども問題となり1970年代にはほぼ使用が禁止されました。

次に登場したのが有機リン系の農薬です。

私たちが忘れることのできない「地下鉄サリン事件」のサリンはこの有機リン系です。

また、少し前ですが中国で製造、輸入された「毒入りギョウザ」で広く知られることになった
メタミドホスも同じ有機リン系の農薬なのです。

その毒性の強さは難しい専門用語を並べた説明を引用しなくてもお分かりになると思います。

この有機リン系に代わる「より安全な農薬」として2000年以降急速に広まっているのが
ネオニコチノイド系農薬なのです。

それまでの農薬よりも毒性が低く効果が持続する、
つまり使用量を減らすことができるネオニコチノイド系農薬。

散布回数を減らすことで減農薬とうたえる上に作業も軽減されるこの農薬は、
農家にとってまさに夢の新農薬だったのです。

農協や製造する企業が一体となって販売を促進させてきました。

その結果、日本ではこの10年で
ネオニコチノイド系農薬の使用量が3倍にも膨れ上がっています。

しかも依然として有機リン系農薬も使用されているというのが現状です。





■ネオニコチノイド、その正体は

低毒性で作業効率も上がり効果も持続するという
いいことずくめの新農薬ですが、これだけの効果があって
本当に以前の農薬よりも安全なのでしょうか?

安全性が声高らかに喧伝されている一方、
警鐘を鳴らす農家・養蜂家・市民・研究者がいます。

世界に目を向けると、フランスなど
すでにネオニコチノイド系農薬の使用を規制している国も出てきています。

大きな理由は、ミツバチをはじめとするさまざまな虫・鳥といった生物の減少。

生態系全体に影響を及ぼしていることが明らかになってきたからです。



■人への影響

ネオニコチノイドは、
農薬としての優れた効果を示す三つの特性があります。

それは、神経毒性、浸透性、残効性です。

神経毒性。昆虫の神経系で重要な働きをもつ
アセチルコリンという神経伝達物質の正常な働きを攪乱するといいます。

この働きにより、害虫を駆除できるのですね。

ネオニコチノイドの神経毒性、
害虫とされる昆虫たちに効果があるのはわかりましたが、
私たち人間には影響がないのでしょうか?

ネオニコチノイド推奨派は、
「昆虫には毒性が強いが、人への影響は少ない」
といわれています。

しかし、昆虫の神経系は哺乳類と基本は似ており、
この「アセチルコリン」は人体においても重要な神経伝達物質なのだそうです。

アセチルコリンに作用するネオニコチノイドは、
当然人体へも影響を及ぼす可能性があるといわれています。





日本においても実際に健康被害が報告されています。

ある県では2003年以降、ネオニコチノイド系殺虫剤が原因と
思われる頭痛、吐き気、めまい、物忘れなどの自覚症状や、
心電図異常がみられる患者さんが急増しているといいます。
 
患者さんの共通する特徴に、国産の果物やお茶を積極的に摂
取していることがあげられるそうです。

なぜ国産の果物やお茶が? 

と思われるのではないでしょうか。

実は、日本の農産物のネオニコチノイド系農薬の残留基準は
欧米よりもかなり緩く、アメリカの10倍、欧州の100倍近いのです。

さらに、ネオニコチノイド系農薬には浸透性があります。

植物の表面だけでなく内部にもしっかり行き届いているのです。
当然、「洗ってもとれない」のです。





食べることにより体内に取り込む以外にも危険が潜んでいます。

「空中散布」です。

ネオニコチノイド系農薬散布時に自覚症状を訴える患者さんが増加しているそうです。

患者さんには、神経への毒性とみられる動悸、手の震え、物忘れ、うつ焦燥感等のほか、
免疫系の異常によると考えられる喘息・じんましんなどのアレルギー性疾患、風邪が
こじれるなどの症状も多くみられるという報告があります。





また使用方法にも問題があるといわれています。

ネオニコチノイド系の中で最も売れている人気の農薬があります。

名前は挙げませんが、断トツに売れているヒット商品です。

使用方法をみると、希釈倍数が8~300倍となっています。

8倍は無人ヘリコプターによる散布です。

確かに無人のラジコンヘリコプターでの散布は、
近くに作業者もいませんし、作物すれすれに飛ぶのでそれほど飛散しない
ということで濃くても良いのかも知れませんが、実際にそれを食べる人や、
自然への影響は考えられていないように思えます。





■身近な危険

ネオニコチノイド系農薬が虫だけでなく人間にも影響を及ぼすのは
疑いようのない事実のようです。

自律神経系、中枢神経系、免疫系も含む全身に影響する恐れがあるのですね。


「わたしは無農薬のものを選んでいるから大丈夫」

「周りに畑や田んぼがないから農薬散布の心配もない」


確かに、影響は限りなく少なくできているのかも知れませんが、
思わぬ落とし穴というのはあるもので、ネオニコチノイドは
すでに私たちの暮らしのいたるところに入り込んでいるのです。

例えば、ペットのノミ取り剤。

犬や猫の首のところに直接垂らすあの薬剤です。

また、一般家庭用の殺虫剤やガーデニング用の農薬にも使用されています。




日本で登録されているネオニコチノイド系農薬をに記しておきますね。





あと忘れてはならないのが「建材」です。

主にシロアリ駆除です。木材にネオ二コチノイド系農薬を染み込ませてあるのです。

ネオニコチノイド系農薬が神経系に作用することはお伝えしました。

自宅でくつろいでいるのに「なんか気分が優れない」「おちつかない」と
感じている方がいらしたら、お家の中にネオニコチノイドを使った商品が
ないか確認されてみてはいかがでしょうか?






■子どもたちへの影響

最近、落ち着きがない子どもが多いという話をよく耳にします。

これは深刻な問題です。

米国科学アカデミーは、子どもの神経行動異常(ADHDや自閉症など)の1/3は、
農薬やその他の化学物質暴露の直接的影響あるいはそれらと遺伝子との相互作用
によると推定しています。

有機リン系農薬に暴露した子どもはADHD(注意欠陥他動性障害)になりやすい
という研究結果はすで報告されています。

神経系に影響を及ぼすネオニコチノイドも子どもたちの脳になにかしらの
影響を与えてると考えるのが自然ではないでしょうか?

これだけでも深刻な問題ですが、
さらに問題なのは、多動症と診断された子どもたちへの薬物処方です。

覚醒剤と同等ともいわれる精神薬が幼い子どもたちに処方されているのです。





■安全神話

子どもたちも含め、これほどまでにさまざまな影響を及ぼす
ネオニコチノイド系農薬ですが、残念ながら日本ではその対応が遅れています。

その背景には、原子力村同様の「農薬ムラ」の存在があるといえます。

農薬をめぐる利権構造をなす農水省や農業関連企業、農薬メーカー、
御用学者たちは、都合の悪い事実を覆い隠してしまっているのです。

ミツバチの減少にしても、農薬主犯説を認めようとはしません。

確かに、農薬以外の要因はあると思います。

ウイルスや細菌、ダニ、農作物の受粉のために高温のビニルハウス内で
酷使されることによるストレスなど複合的な要因です。

日本を含めた世界各地で起きているミツバチの減少は、
必ずしも農薬だけによるものではないかも知れませんけれども、
農薬から私たちの目をそらすために複合原因説をあえて強調している感じは否めません。

それは、さまざまな被害が報告されているにも関わらず、
原因究明をしない、結果ありきの研究しかなされていないことからも伺えます。


■わたしたちにできること

ここまでお読みいただいた方は、
「ネオニコチノイド系農薬は嫌だ!」そのように思われたのではないでしょうか? 

しかし、現代農業において今すべての農薬の使用を禁止にしたらおそらく食料が不足します。

それほどに土は病み、その土から生まれる農産物は農薬なしでは
収獲がままならないほどになってしまっています。

かといって現状を放置したままでは
アインシュタインの言葉の通りになってしまうかもしれません。


ここ数年、自然栽培が急速に広まってきているのは、
まさにこの危機的状況を打破するためのように思えてなりません。

自然のしくみに沿った育て方をすることによって、
農薬を使う必要のない農業が可能であることを多くの人が気づきはじめているのだと思うのです。


私たち日本人の主食はお米です。


国土の7パーセントが水田のこの国において、
農薬の約40パーセントは水田で使用されています。

一方で農薬を一切必要としない自然栽培のお米があります。

農薬を使わずともできるのに、な
ぜ全国の40パーセントもの農薬を稲作に使用しているのでしょうか?

その理由のひとつが「等級」を下げないためです。

お米には「等級検査」というものがあります。

1000粒に1粒より多く着色米(斑点米)が混入すると等級が下がってしまいます。

着色米の原因はカメムシです。

このカメムシの駆除も大量に農薬が散布されている一因なのですが、
自然栽培の稲作ではカメムシによる害は極めて少ないです。

すぐに自然栽培へ切り替えるのは無理でも、

「ちょっとくらい着色米が混ざってても農薬を使わないお米が食べたい!」

という消費者が増えれば、まずは無農薬栽培に移行する農家さんも増えるかもしれませんね。


■待ったなし!

ミツバチだけでなく、多様な生物への影響は世界的にみても
もう待ったなしのところまできています。

先ほども申し上げたように、もしかしたら農薬だけが原因ではないかも知れません。

ウイルスやダニ、電磁波が影響していると指摘する研究者もいます。

しかしそれらはネオニコチノイドなどの農薬から目をそらすために作り出された話かも知れません。

真実を追及することは大事かも知れませんが、
まずできることろからひとつずつ変革を起していきたいと思っています。

私たちが鵜呑みにしてきてしまった安全神話「夢の新農薬ネオニコチノイド」。

再度検証する必要がありそうです。


最後になりますが、
どんな農薬でも使い続ければ必ずや耐性を持つ害虫や病原菌が発生します。

例外はありません。

自然の法則なのですね。

ネオニコチノイド系農薬もすでに耐性を持つ虫が発見されているのです。

もう、よりよい農薬を追い求めるのはやめて、
農薬を必要としないよりよい農業を追求し、広めていくべきときに来ていると思います。

子どもたちの未来を奪わないためにも。

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最後までお読みいただき誠にありがとうござました♪




参考文献 『新農薬ネオ二コチノイドが日本を脅かす』 水野玲子著
資料は「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」さんの出版物から許可を得て掲載しています。